賃貸の更新料、保証会社にも払うのは二重取り?|21年目の管理会社が線引きを解説

契約者・入居者向け|賃貸トラブルと管理会社の対応

「更新のお知らせ」の封筒を開けたら、更新料3万円の請求書と一緒に、見覚えのない「保証委託更新料11,000円」という別紙が入っていた——。この時期、管理会社にはこの手の問い合わせが集中します。

「更新料は今の契約書に書いてあるから分かる。でも保証会社の更新料って何? 二重取りされていないか」という疑問です。実際、Yahoo!ニュースにも「更新料で13万円飛んだ」「保証会社利用料2万円は必要か」といった体験談が繰り返し取り上げられており、Yahoo!知恵袋でも同種の質問が絶えません。

この記事では、賃貸管理会社に21年勤務し、入居審査・滞納対応・退去立会いを担当してきた立場から、「更新料」と「保証委託更新料」という名前の似た2つの請求を法的に整理し、今日から使える確認・交渉の手順を具体的に示します。

結論から言うと、更新料と保証委託更新料は請求元も法的根拠も別物であり、両方請求されること自体は違法ではありません。ただし契約書に記載がない金額や、更新事務の実態に比べて著しく高い金額については、消費者契約法10条を根拠に減額や無効を主張できる余地があります。

結論と、その理由

「更新料」は貸主(オーナー)への支払い、「保証委託更新料」は保証会社への支払いであり、請求の相手も契約書も別です。賃貸借契約書に基づく更新料は貸主との賃貸借契約の更新に対する対価、保証委託更新料は保証会社との保証委託契約の更新に対する対価です。契約が二つある以上、費用も二つ発生し得るというのが基本構造です。

とはいえ、「別物だから何でも取っていい」わけではありません。最高裁は更新料について「契約書に一義的かつ具体的に記載され、金額が家賃に比べて高額すぎない限り原則有効」という枠組みを示しています。逆に言えば、契約書に記載がない請求や、更新作業の実態とかけ離れて高額な請求は、この枠組みから外れて無効になり得るということです。まず自分の契約書と重要事項説明書を確認することが、今日できる最初の一歩です。

いま何が問題になっているのか

2020年の民法改正で、個人が連帯保証人になる場合は極度額(上限額)の明記が義務化されました(民法465条の2)。国土交通省の調査では、裁判で確定した保証人の負担額は平均で家賃の約13.2か月分にのぼるとされ、個人保証人になるリスクが可視化された形です。

この結果、個人保証を敬遠する動きが強まり、賃貸契約の入口で「保証会社の利用が必須」とされるケースが急増しました。管理会社の実感としても、ここ数年で個人保証のみで契約が通る物件はかなり減っています。

Yahoo!ニュースでも「更新料で13万円飛んだ」「保証会社利用料2万円は必要か」といった記事が繰り返し配信されており、コメント欄には「更新のたびに費用の内訳が増えている気がする」という声が多く寄せられています。Yahoo!知恵袋でも「保証会社の更新料は年額で家賃の50〜100%程度取られた」「退去済みの物件なのに更新料を請求された」といった質問が定番化しており、入居者側が二つの請求を混同したまま支払い、あとから疑問を持つパターンが非常に多いのが実情です。

保証会社の利用が広がったことで、当然「保証会社との契約更新」という局面も一般化し、更新料と保証委託更新料が同時に届く場面が増えたのが今の状況です。国土交通省は2017年から家賃債務保証業者登録制度を設け、悪質業者を排除する仕組みを整えていますが、これはあくまで任意登録であり、登録業者だから料金が安いとは限らない点は知っておく必要があります(国土交通省・家賃債務保証業者登録制度)。加えて近年は人件費の高騰により、保証会社側の審査・督促・書面対応にかかるコストも上がっており、それが保証料・更新料の値上げという形で入居者側に転嫁される傾向も出てきています。火災保険料の値上げと同じ構図が、保証会社の世界でも起きていると考えてよいでしょう。

制度・法令の正確な整理

この二つが混同されやすいのには、はっきりした理由があります。多くの保証会社は保証期間を賃貸借契約の更新サイクル(2年が一般的)に合わせているため、貸主への更新料の請求と、保証会社への保証委託更新料の請求が同じ時期に重なって届くことが非常に多いのです。同封や同時期の郵送により、入居者側は「一つの更新料を二重に請求された」と誤解しやすくなります。

さらに支払い方法の違いも誤解を招きやすいポイントです。貸主への更新料は振込での支払いを求められることが多い一方、保証委託更新料は契約時に登録した口座からの自動引き落としで処理される保証会社が少なくありません。「振込のつもりで待っていたら実は引き落としだった(督促が来て気づいた)」「身に覚えのない引き落としだと思い保証会社に問い合わせたら、実は保証委託更新料だった」という行き違いは、管理会社の窓口でも頻繁に発生します。どちらの費用が振込でどちらが引き落としなのか、契約書と通帳を照らし合わせて確認しておくことをおすすめします。

まず、更新料と保証委託更新料の違いを表で整理します。専門用語が混ざりやすいポイントなので、契約書を見ながら照らし合わせてください。

項目 更新料 保証委託更新料
支払先 貸主(オーナー) 家賃保証会社
根拠契約 賃貸借契約書 保証委託契約書
主な法的根拠 借地借家法・契約自由の原則 保証委託契約(民法上の準委任・保証契約の性質)
相場 家賃の0.5〜1か月分程度 家賃の30〜100%程度(会社により幅が大きい)
消費者契約法10条の適用 記載明確・高額すぎなければ有効 同様の枠組みで争える余地あり

なお、保証委託更新料は必ずしも年払いとは限りません。契約更新のタイミング(多くは2年に一度)にまとめて請求する会社もあれば、家賃と合わせて毎月少額ずつ徴収し続ける会社もあります。契約時の重要事項説明書や保証委託契約書で、金額だけでなく「いつ・どの周期で請求されるのか」も確認しておくことをおすすめします。

ここで重要なのは「契約書に明記されているか」です。更新料も保証委託更新料も、契約書・重要事項説明書に金額と算定根拠が明記されていなければ、支払う義務はありません。逆に明記があれば、金額が常識的な範囲である限り、支払い義務があると考えるべきです。

裁判例はどう判断してきたか

更新料や保証会社の契約条項をめぐっては、最高裁判所が重要な判断を示しています。細かい事件番号よりも、結論の骨子を押さえることが実務上は重要なので、ここでは判示内容に絞って紹介します。

最高裁判所 平成23年7月15日判決
賃貸借契約書に更新料の金額・算定方法が一義的かつ具体的に記載されている場合、その金額が家賃や更新期間に照らして高額すぎるなどの特段の事情がない限り、更新料条項は消費者契約法10条に違反せず有効である、と判断しました。

最高裁判所 令和4年12月12日判決
家賃債務保証会社の保証委託契約に含まれていた「賃料等の支払いを一定期間怠った場合に無催告で契約を解除できる」とする条項、および「借主が一定期間物件を使用しない場合に明渡しがあったとみなす」とする条項について、消費者契約法10条に違反し無効と判断しました。

この2つの判決から読み取れる実務上のポイントは明確です。「契約書に明記され、金額も手続きも常識的な範囲」であれば有効、「契約書にない請求」や「借主に一方的に不利な条項」は無効になり得る、という一貫した姿勢です。保証委託契約のひな形にこうした条項が残っていないか、契約時に確認する価値があります。

【現場の実際】21年の実務から

建前と現場運用の間には、正直かなりの差があります。21年間、更新の窓口対応をしてきた立場から、よくある4つの場面を具体的にお話しします。

場面1:保証委託更新料は金額だけでなく、請求のタイミングも保証会社によってバラバラ。同じ管理会社が扱う物件でも、A社は賃貸借契約の更新に合わせて2年に一度1万円、B社は年1回、家賃の50%、C社は毎月の家賃と一緒に数百円ずつ上乗せして徴収と、金額も周期も保証会社ごとに大きく異なります。「保証委託更新料=年払い」とは限らないため、毎月の請求書に見覚えのない数百円が乗っているとしたら、それが保証料の分割徴収である可能性もあります。これは貸主や管理会社が決めているのではなく、保証会社の独自の料金体系です。入居者から「なぜうちだけ高いのか・毎月取られるのか」と聞かれても、管理会社側が交渉できる余地は限定的なのが実情です。

場面2:更新料の請求が来ない=お得、ではない場合がある。更新料がゼロの物件は、その分保証委託更新料が高めに設定されていることが多く、貸主側の収益構造が保証会社経由にシフトしているだけというケースをよく見ます。トータルの負担で比較することが重要です。

場面3:滞納歴があると保証委託更新料が上がる、または更新自体を断られる。保証会社は独自の審査基準を持っており、過去の家賃滞納・遅延の回数が更新料や更新可否に直結します。管理会社としては、更新前の3か月は特に入金状況をシビアに見ています。さらに見落とされがちなのが、家賃が遅れるたびに発生する「督促手数料」です。保証会社によっては、支払期日を過ぎて督促の連絡・書面を送るたびに数千円程度の督促手数料を別途請求する契約になっており、滞納が多い人ほど更新料以外の費用もかさんでいく構造になっています。督促手数料の有無・金額も保証委託契約書に記載があるはずなので、心当たりがある場合は確認しておくべきです。

場面4:「更新事務手数料」という第三の請求が紛れ込むことがある。更新料・保証委託更新料とは別に、管理会社の事務代行費用として「更新事務手数料」が請求される契約も存在します。これは貸主でも保証会社でもなく管理会社自身の収益であり、契約書に記載がなければ支払う義務はありません。3つの請求を混同せず、誰が何のために請求しているのかを一つずつ分解するのが交渉の出発点です。

場面5:オーナーチェンジの直後は、保証会社ごと切り替わっていることがある。物件の所有者が変わると、新しいオーナーが提携する保証会社に切り替えられ、それまで使っていた保証会社とは別に、新しい保証会社との保証委託契約を結び直すケースがあります。この場合、更新のタイミングで「聞いたことのない保証会社名」が急に出てくるため、入居者が不審に思って問い合わせてくることが多い場面です。オーナーチェンジ後に更新料が急に変わるケースと根っこは同じで、まずは重要事項説明書に記載された保証会社名を確認することが第一歩になります。

ケース別の負担区分・対応

実際に更新のお知らせを受け取ったら、どう動けばよいか。状況別に対応を整理しました。

状況 支払い義務 今日取れる行動
両方とも契約書に明記・金額も常識的 あり 期日までに支払う。分割相談は早めに管理会社へ
保証委託更新料の記載が契約書にない 争える 保証委託契約書の写しを取り寄せ、根拠条項を確認
更新事務手数料など第三の請求がある 要確認 誰が何のために請求しているか管理会社に書面で照会
更新料・保証委託更新料が家賃の数か月分と高額 争える可能性 消費者契約法10条を根拠に減額を書面で申し入れ
保証会社の再加入審査に通らなかった 別問題 滞納履歴を確認し、別の保証会社への切替を管理会社に相談
支払いが遅れがちで督促手数料が積み重なっている 契約次第であり 保証委託契約書で督促手数料の条項を確認し、まずは滞納そのものを解消する

着地の実務——どこで折り合うか

現実的な手順

1. 手元の書類を3種類そろえる。賃貸借契約書、重要事項説明書、保証委託契約書です。更新料・保証委託更新料の記載箇所にふせんを貼り、金額と根拠条項を一つずつ確認してください。

2. 記載のない請求だけを対象に照会する。「更新料には納得しているが、保証委託更新料の根拠条項が見当たらないので教えてほしい」というように、争点を絞って書面かメールで問い合わせると、管理会社側も具体的に回答しやすくなります。

3. 減額ではなく分割・時期調整から交渉する。金額そのものを争うより、「今月は一括で厳しいので分割にしてほしい」という現実的な相談の方が、管理会社側も社内で通しやすいのが実情です。更新料が急に値上げされたケースでも、まずは分割相談から入るのが定石です。

4. 社内で解決しない場合は、相談窓口へエスカレーションする。管理会社に書面で照会しても金額の根拠が示されない、あるいは明らかに不当と感じる高額請求が続く場合は、最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン188)への相談を検討してください。第三者機関が入ることで、管理会社・保証会社側の対応が変わることも少なくありません。

相談先ごとの特徴は次の通りです。いきなり弁護士に依頼する前に、まず無料の窓口を使うのが現実的な順番です。

相談先 向いている場面 注意点
管理会社の窓口 金額の根拠や算定方法を確認したいとき 口頭でなく書面・メールで記録を残す
消費生活センター(188) 契約書に記載のない請求、著しい高額請求 無料だが、あくまで助言・あっせんが中心
弁護士・法テラス 交渉が決裂し、法的手続きを検討する段階 費用がかかるため、争う金額とのバランスを見る

やってはいけないこと

更新料・保証委託更新料の支払いを黙って放置することは絶対に避けてください。保証委託契約が更新されないまま放置されると、保証会社側から契約解除、つまり保証そのものが解約されてしまいます。保証がなくなった状態を管理会社が放置することはできないため、ほぼ確実に「別の保証会社(または同じ保証会社)への再加入」を求められます。ここで最も痛いのが、再加入は更新ではなく新規契約扱いになり、更新料よりずっと高額な「初回保証料」(家賃の50〜100%程度が相場)をもう一度支払う必要が出てくる点です。数千円〜1万円程度の更新料を惜しんだ結果、数万円の初回保証料を再度払う羽目になっては本末転倒です。加えて法定更新扱いになっている場合は、再加入審査にも通りにくくなります。「払いたくないから無視する」は最も避けるべき選択肢です。

よくある質問

Q. 保証委託更新料を払わなかったらどうなりますか?
A. 直ちに強制退去にはなりませんが、保証が切れた状態になります。その間に家賃滞納が起きると保証会社の立て替え(代位弁済)が受けられず、管理会社が直接督促する形になり、関係がこじれやすくなります。早めに分割や時期調整を相談してください。
Q. 保証会社を自分で選ぶことはできますか?
A. 多くの物件では貸主・管理会社が指定した保証会社の利用が契約条件になっており、入居者側で自由に選べないのが実情です。更新時に別会社への切替を希望する場合は、契約前に管理会社へ相談する必要があります。
Q. 更新料が0円の物件でも保証委託更新料は発生しますか?
A. はい、発生します。更新料と保証委託更新料は別契約の別費用なので、更新料が無料でも保証会社との契約が続く限り保証委託更新料は原則発生します。
Q. 退去する予定でも更新料・保証委託更新料は払う必要がありますか?
A. 更新日をまたいで契約が継続する場合は原則として発生します。更新日より前に解約予告を出して退去する場合は不要になることが多いので、退去予定があるなら早めに解約予告の時期を確認してください。
Q. 保証委託更新料が高すぎると感じたら、まずどこに相談すればいいですか?
A. まずは管理会社に金額の根拠を書面で照会してください。それでも納得できる説明がない場合は、最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談するのが現実的な次の一歩です。契約書・重要事項説明書・請求書をそろえておくと相談がスムーズに進みます。

まとめ

更新料と保証委託更新料は、支払先も法的根拠も異なる別々の請求です。両方請求されること自体は違法ではありませんが、契約書に記載のない金額や、事務作業の実態とかけ離れて高額な請求には、消費者契約法10条を根拠に交渉できる余地があります。まずは3種類の契約書を並べて、どの請求がどの契約に基づくものかを一つずつ確認することから始めてください。

この記事の裏づけ

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執筆者:不動産管理会社勤務・業界21年。賃貸管理/入居審査/家賃滞納対応/退去立会い/原状回復を担当。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別事情により対応は異なります。法的判断や具体的な対応は、必要に応じて弁護士・専門家・関係機関へご確認ください。

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