「一度家賃を滞納したら、もう賃貸は借りられない」——そう怯えている人へ、先に結論を言います。
保証会社どうしが滞納情報を共有していた“ブラックリスト”は、2026年3月末で実際に消えました。
ただし、あなたの保証会社が“信販系”だったなら、その滞納は今も別の場所に5年残っています。
「賃貸のブラックリスト」は都市伝説ではなかった
ネットで「賃貸 ブラックリスト」と検索したあなたは、たぶんこう不安に思っています。「昔、家賃を滞納した」「保証会社に立て替えられたことがある」「あれって記録が残っていて、次の審査で落とされるんじゃないか」と。
はっきり言います。その不安は正しかった。少なくとも2026年3月までは。
賃貸保証会社の一部は「LICC(全国賃貸保証業協会)」という団体に加盟し、加盟社どうしで滞納・代位弁済(=保証会社が家賃を立て替えた記録)の情報を共有していました。つまり「A社の保証で家賃を飛ばした人」は、「B社の審査」でもその履歴が見える状態だったのです。世間で言う“賃貸のブラックリスト”の正体の一つが、これでした。
2026年3月31日、そのブラックリストは消えた
ところが、その共有データベースは2026年3月31日をもって運用を終了し、協会が保有していた情報はすべて破棄されました(全国賃貸保証業協会 公式発表)。本人開示の受付も2026年4月1日で完全に終了しています。
つまり、2026年4月以降、LICCのデータを使った審査はもう行われません。過去にLICC系の保証会社で滞納した記録だけを理由に落とされる、ということは無くなったわけです。
▼ この状況の方へ
「今まさに滞納していて、保証会社がいつ動くのか怖い」——タイムラインを先に知っておきましょう。
→ 家賃滞納すると保証会社はいつ動く?2ヶ月で解除通知・4ヶ月で訴訟の現実タイムラインなぜ消えたのか——協会は理由を語らないが、答えは「業界の主役交代」にある
不思議なのは、協会が廃止の理由を一切公表していないことです。ただ、業界の動きと国の資料を並べると、消えるべくして消えたことがわかります。
決定打は、業界最大手の動きでした。2025年、LICCで会長格だった最大手「全保連」が、三菱UFJニコス(MUFG)に買収され子会社化されたのです(日本経済新聞・時事通信が報道)。狙いは家賃のクレジットカード払いと、MUFGが持つ信用情報網の活用。そして2026年4月、全保連はLICCの会員一覧から姿を消しました。
共有データベースは、会員各社が滞納データを持ち寄って初めて成り立ちます。その盟主が抜ければ、網羅性=存在価値は崩れます。
加えて構造的な弱点もありました。LICCは、クレジットカードやローンの情報を扱う「CIC」のような“法律で指定された信用情報機関”ではなく、業界が自前で運営していた任意のデータベースにすぎません(国土交通省資料)。個人情報保護法が厳しくなるなか、氏名・免許証番号・滞納残高までを持つDBを、法的な後ろ盾なしで維持するコストは重くなる一方でした。
——つまり業界の主役は、「自前のブラックリスト(LICC)」から「法で守られた信用情報(CIC・JICC)」へ静かに乗り換えた。LICCの終了は、その象徴なのです。
※「全保連の離脱が廃止理由」と協会が認めたわけではありません。公式は理由を公表しておらず、ここは報道と業界の動きから読み取れる背景です。
管理会社の本音:「消えた」と聞いて安心するのはまだ早い
ここからが現場の本音です。
「LICCが消えたなら、もう過去の滞納はバレないんですね?」——そう聞かれたら、私たちはこう答えます。「半分は正しい。でも、あなたの保証会社が“信販系”だったら話は別です」と。
家賃保証会社は大きく分けて、独立系・信用系(旧LICC系)・信販系があります。このうち信販系——オリコ、ジャックス、エポス(room iD)、アプラスといったクレジットカード会社系列の保証会社は、そもそもLICCではなくCICに加盟しています。
▼ この状況の方へ
「次の審査、何を見られるのか」——管理会社が申込書のどこを警戒しているかを知っておくと動きやすくなります。
→ 賃貸審査、申込書で管理会社が見ている警戒ポイント全22項目【現場担当が解説】消えないもう一つのリスト:信販系の滞納は「CIC」に5年残る
CIC公式で確認できる事実です。信販系の保証会社を使っていて家賃を滞納すると、保証会社があなたの代わりに家賃を立て替え(代位弁済)、その事実がCICに「異動情報」として登録されます。これが、いわゆる“ブラックリスト入り”です。
- 61日以上、または3か月以上の延滞は「異動」として記録される
- その記録は5年間残る
そしてCICは、LICCと違って国が割賦販売法・貸金業法にもとづき指定し、経済産業省・金融庁の監督下にある制度そのものです。だから消えません。揺らぎようがない。LICCが“法の外”にいたから消え、CICは“法そのもの”だから残る——この違いが決定的です。
しかもCICの怖いところは、家賃だけの話で終わらない点です。CICはクレジットカードやローンの審査でも参照されます。信販系保証で家賃を飛ばした記録は、将来のクレカ・ローン・分割払いの審査にまで影響しうるのです。
あなたの保証会社はどの系統?——名前より“提携先”で見抜く
自分の記録がどこに残るかは、保証会社が「どの系統か」で決まります。契約書に載っている保証会社名で、まず当たりをつけてください。
| 系統 | 滞納の残り方 | 主な会社(例) |
|---|---|---|
| 信販系/CIC組 (消えない) |
CICに5年。クレカ・ローン審査にも影響 | オリコフォレントインシュア/ジャックスレントアシュア/エポス(room iD)/アプラス/SBIギャランティ/クレディセゾン/レジデンシャルパートナーズ(RPプラスJ=ジャックス提携) |
| 旧LICC系 (共有DBは2026/3で消滅) |
業界共有は終了。以後は各社の社内記録のみ | 全保連(→MUFG傘下で離脱)/ジェイリース/ホームネット/賃住保証サービス/近畿保証サービス/ニッポンインシュア |
| 独立系 (自社DBのみ) |
CIC・LICCを参照せず。各社の社内記録のみ | Casa/日本セーフティー/フォーシーズ/ラクーンレント(旧ALEMO)/ハウスリーブ/いえらぶパートナーズ |
注意したいのは、“見た目”で油断しないことです。たとえば東急系の「レジデンシャルパートナーズ」は独立系に見えますが、主力プラン(RPプラスJ)はジャックスと提携しており、滞納はジャックス経由でCICに載りえます。会社名の印象ではなく、契約書に“提携している信販会社(ジャックス・オリコ等)の名前”がないかを探してください。
よくある勘違い3つ
①「LICCが消えたから、もう何をしても記録は残らない」→ 誤り
信販系保証(CIC加盟)を使っていれば、滞納は今も5年残ります。
②「管理会社の“要注意人物リスト”も消えた」→ 誤り
LICCの共有DBは消えましたが、個々の管理会社が社内に持っている入居者メモ(過去のトラブル記録)は別物で、消えていません。同じ管理会社・系列で再契約しようとすれば、そこで引っかかることはあります。
③「ブラックでも保証会社を変えれば必ず通る」→ 半分正しく、半分危険
信販系→独立系に変えれば信用情報の照会は避けられる可能性があります。ただし独立系も緊急連絡先や収入は独自に厳しく見ます。「誰でも通る」わけではありません。
過去に滞納・強制退去歴がある人が、今やるべきこと
放置しても不安は消えません。順番にやりましょう。
- 自分の保証会社が“どの系統”だったかを確認する。契約書に保証会社名が載っています。オリコ・ジャックス・エポス・アプラス等のカード会社系なら信販系=CIC組です。
- 信販系だったら、CICに自分の情報を開示請求する。本人ならネット・郵送で数百〜千円程度で確認でき、異動情報が載っているか・いつ消えるかがわかります。
- 延滞が続いているなら、今すぐ止める。5年のカウントは「延滞が解消した日」から進みます。放置=時計が進まない、が一番損です。
- 次の部屋探しでは“独立系”を使う物件を選ぶ。Casa・日本セーフティー・いえらぶパートナーズなどはCIC・LICCを参照しないため、過去の傷が審査に響きにくく、再チャレンジの余地があります。
- すでにトラブルが法的段階(内容証明・訴訟)に入っているなら、一人で抱えない。収入が厳しい場合は、無料法律相談を受けられる法テラスという公的窓口があります。
▼ 次にやるべきことはこちら
「そもそも今の家賃が払いきれない」なら、使える公的支援があります。滞納を5年残す前に確認を。
→ 家賃が払えない方へ|住居確保給付金など使える支援3選【2026年版・管理会社解説】まとめ
- 保証会社間で滞納情報を共有していたLICCのブラックリストは2026年3月末で消えた
- 背景には、最大手・全保連のMUFG傘下入り(=LICC離脱)と、法的根拠の弱い自主運営DBが個人情報保護法の時代に維持できなくなった構造がある(協会は理由未公表)
- ただし信販系(CIC加盟)の滞納は今も5年残る。CICは国の制度なので消えない
- 過去に傷がある人は「保証会社の系統確認 → CIC開示 → 延滞解消 → 次は独立系を選ぶ」の順で動く
不安なまま検索を続けるより、自分の記録が“どこに・いつまで”あるのかを確定させるほうが、はるかに早く楽になります。
📝 NOTE
管理会社の”本音”、noteでも話してます
同じテーマを、noteではもう少し話しかけるように書いています。
コメントや質問はnoteの方がしやすいので、お気軽にどうぞ。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別事情により対応は異なります。保証会社の系統・審査基準・情報の取り扱いは契約内容や時期により変わる場合があります。法的判断や具体的な対応は、必要に応じて弁護士・専門家・関係機関へご確認ください。



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