【2026年7月】退去費用がまた上がる|ナフサショックで原状回復費が高騰する理由と、払わなくていい費用の見分け方

契約者・入居者向け|賃貸トラブルと管理会社の対応

退去費用は、2026年7月からまた上がります。原因は建材の値上げと人手不足のダブルパンチで、これは個別の管理会社のさじ加減ではありません。

ただし、上がる費用の中には「あなたが払う必要のない部分」が確実に含まれています。

この記事は、値上げに便乗した過大請求を見抜き、敷金を守るための実務ガイドです。

退去費用は上がる。でも「全部あなた持ち」ではない

まず事実から。2026年7月、賃貸の原状回復に使う建材が一斉に値上がりします。壁紙クロスで18〜30%。床材も同水準。塗料にいたっては50〜75%です。

これは特定の不動産会社が値上げしているわけではなく、業界全体で起きている構造的なコスト上昇です。だから「この管理会社は良心的だから安い」という話は、もう通用しにくくなっています。

ただし、ここで勘違いしてはいけないことがあります。値上がりするのは“工事の単価”であって、“あなたの負担割合”ではありません。経年劣化や通常の使用による傷みは、もともと大家負担。これは民法に明記されています。値上げ局面こそ、この線引きを知らない人が損をします。

何が、いつ、どれだけ上がるのか

きっかけは2026年2月のホルムズ海峡封鎖です。日本は原油輸入の約9割をこの海峡に依存しており、石油由来の「ナフサ」が一気に不足しました。これがいわゆるナフサショックです。

賃貸の退去費用に直結する建材は、こう動いています。

  • 壁紙クロス:サンゲツ・東リが7月1日、リリカラが6月29日から18〜30%値上げ
  • 床材(クッションフロア・フローリング):田島ルーフィングが7月21日に20〜30%、朝日ウッドテックも値上げ
  • 塗料・シンナー:日本ペイント75%、関西ペイント50%超。一部は「供給停止の可能性」まで通知

しかも値上げは7月が初めてではありません。クロス張替えの単価は数年前の1,200円/㎡から、すでに1,500円/㎡へ。この2〜3年で2〜3割、もう上がっています。7月はそこへさらに上乗せされる、ということです。

管理会社の本音:値上げは「請求を盛る口実」になりやすい

ここから現場の話です。

値上げ局面で管理会社が何を考えるか。建前は「適正なコストを請求する」。でも実務では、値上げを理由にすれば、多少高い見積もりでも入居者が納得しやすくなるのを知っています。「最近、材料が高くて」と言われると、反論しづらい。これが現場のリアルです。

特に起きやすいのが、廃番を理由にした全面張替え。クロスや床材は値上げと同時に廃番も進みます。「同じ商品がもう手に入らないので、部分補修ができません。全面で張り替えます」——これは一見もっともらしいですが、全面張替えの費用を全額入居者に請求するのは別の話です。

リアルなケース:6畳の部屋で何が変わるか

例えば6畳の壁紙を全面張り替えると、面積はおよそ30〜40㎡。

  • 旧単価1,200円/㎡なら 約3.6〜4.8万円
  • 新単価1,500円/㎡+7月の値上げが乗ると 約5〜6万円超

同じ部屋・同じ汚れでも、退去のタイミングが数か月違うだけで1万円以上変わる計算です。さらに工事の遅れも起きています。塗料などの欠品で1工程が止まると工事全体が遅れ、敷金の精算(返金)が後ろ倒しになるケースも出ています。

▼ この状況の方へ

「請求された金額が高すぎる気がする」——まず相場と内訳を知るところから。

→ 退去費用の相場はいくら?管理会社が出す見積もりの内訳を全部見せます

よくある勘違い:「汚したんだから全額自分持ち」は間違い

一番多い誤解がこれです。

国の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と民法621条では、通常の生活でつく傷み(通常損耗)と、時間の経過による劣化(経年劣化)は大家負担と決まっています。あなたが払うのは、故意・過失でつけた損傷の分だけ。

しかもクロスには耐用年数6年という考え方があります。6年住んでいれば、クロスの価値は会計上ほぼ1円。たとえ破ってしまっても、全額ではなく残った価値分しか請求できません。値上げで単価が上がっても、この按分ルールは変わりません。

国民生活センターには原状回復の相談が年間1万件以上。その典型が「壁の一部の傷で、部屋全体の張替えを請求された」というものです。値上げ局面では、これがさらに増えると見ておくべきです。

放置リスクと、今できる防御

やるべきことは3つです。

  1. 退去のタイミングを意識する:旧単価で精算したいなら、解約予告は早いほど有利になり得ます。引っ越し予定があるなら、見積もりだけでも早めに動く。
  2. 見積書を部位ごとに分けて見る:「一式」でまとめられた見積もりは要注意。クロス・床・クリーニングを分け、「全面か部分か」「経年劣化分が引かれているか」を確認する。
  3. おかしいと思ったら相談先を持っておく:高額請求や全面張替えの根拠が説明されない場合は、消費生活センターや法テラスに相談できます。退去立会を中立の立場でチェックする代行サービスもあります。

逆に、定額クリーニング特約などで退去費用が先に決まっている人は、値上げの影響を受けにくい。自分の契約書を一度確認しておくと安心です。

▼ 次にやるべきことはこちら

高額請求された/敷金が戻らない。そのときの交渉の進め方をまとめました。

→ 敷金が返ってこないときの対処法と、管理会社との交渉の進め方




まとめと次の一手

退去費用は2026年7月からまた上がります。代替の建材は出てきていますが、どれも「止まらないための高い代替」で、費用が下がるわけではありません。

だからこそ、払うべき分と払わなくていい分の線引きを知っているかどうかで、戻ってくる敷金は数万円変わります。引っ越しが視野に入っているなら、まずは引っ越し費用の比較から動き出して、退去の段取りを早めに固めておきましょう。

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