家賃が払えないと思ったら滞納する前に相談を|代理納付・住居確保給付金の使い方

契約者・入居者向け|賃貸トラブルと管理会社の対応

通帳の残高を見て、今月の家賃が足りないと気づく。年金が入るまであと10日。管理会社に電話しなければと思いながら、「怒られるのでは」「追い出されるのでは」と考えて、手が止まってしまう——。

家賃が払えなくなりそうなとき、多くの人が何も言わずに滞納してしまいます。「なんとかしてから連絡しよう」と思っているうちに1か月、2か月と過ぎ、保証会社からの電話や督促の手紙が届くころには、選べる手段がずいぶん減っています。

この記事では、家賃の支払いに不安を感じ始めた方や、高齢の親の家賃が心配なご家族に向けて、いつ・どこに・何を持って・どう言えばいいかを、管理会社で家賃の滞納を担当してきた立場から、今日からできる順にまとめます。

「今月は払えないかも」と感じた時点で相談すれば、使える手段が一番多く残ります。黙って滞納するのが、一番損をする選び方です。

※実際の案件をもとにした再構成です。物件名・所在・時期のほか、金額・入居期間・工事内訳も特定を避けるため変更しています。

結論と、その理由

相談のタイミングは、滞納する前、「払えないかも」と感じたときです。まだ払えているうちでかまいません。

理由は3つあります。1つ目は、管理会社や保証会社との関係がこじれる前なら、支払い時期の相談に乗ってもらいやすいこと。2つ目は、家賃を助ける公的な制度の多くが、住まいを失う前のほうが使いやすいこと。3つ目は、滞納すると遅延損害金(遅れた分の利息のようなお金)が加わったり、保証会社の立て替えが始まって、後から返すお金が増えていくことです。

管理会社は、「払えない」と相談してきた人を追い出したいわけではありません。困るのは、何も言わずに連絡がとれなくなることです。相談してもらえれば、支払い方の相談も、公的な窓口の紹介もできます。

いま何が問題になっているのか

物価の上昇が続き、年金や給料の手取りで家賃と生活費をまかなうのが苦しいという声は、管理会社の窓口にも増えています。一方で、家賃が払えなくなった人を支える制度も、ここ数年で変わってきました。

大きいのは、生活保護の家賃分(住宅扶助)を、本人を通さずに大家さんへ直接払う「代理納付」が原則になったことです。2024年7月の厚生労働省の通知で、家賃と共益費は、滞納があるかどうかに関係なく、原則として代理納付にする扱いに改められました(厚生労働省の通知)。大家さんから見れば、家賃が確実に入る仕組みです。

また、2025年10月には改正された住宅セーフティネット法が施行され、高齢の方などが入居しやすい「居住サポート住宅」の制度が始まりました。見守りや、困ったときに福祉の窓口へつなぐ支援がついた住宅です(国土交通省の説明ページ)。「家賃が払えない」は、一人で抱える問題ではなく、制度を使って解決する問題になってきているのです。

制度・法令の正確な整理

相談先は、困りごとの種類で分かれます。迷ったらどちらに連絡してもかまいません。窓口どうしでつないでくれます。

お金のことは福祉事務所・生活困窮者の相談窓口、暮らしのことは地域包括支援センターと覚えてください。住居確保給付金の申請の流れは家賃が払えない人が使える支援制度で詳しく解説しています。

制度・窓口 どんな人向けか 家賃への効果 相談先
住居確保給付金 仕事を失った、または収入が大きく減った人 家賃相当額(上限あり)を自治体が大家さんに直接支払う。原則3か月、延長で最長9か月 市区町村の自立相談支援機関
生活保護 収入や資産が基準より少なく、働くことが難しい人 家賃分(住宅扶助)と生活費を支給。家賃は原則として大家さんへ直接(代理納付) 福祉事務所
生活困窮者自立支援 生活保護ほどではないが生活が苦しい人 家計の立て直しの相談、各種制度の案内 市区町村の自立相談支援機関
地域包括支援センター 高齢で、家事・外出・お金の管理がつらくなってきた人 介護・見守り・金銭管理の支援につなぐ お住まいの地域のセンター

住居確保給付金の主な条件

住居確保給付金は、生活保護より先に使えることが多い制度です。主な条件は次のとおりです(細かい基準は自治体で確認してください)。

  • 仕事を辞めた・事業をやめてから2年以内、または、本人の責任ではない理由で収入が大きく減ったこと
  • 世帯の収入と預貯金が、自治体の決めた基準以下であること
  • 仕事を探す活動などをすること

家賃は自治体から大家さんに直接支払われるので、支給されている間は滞納がふくらみません。年金だけで暮らしている高齢の方は対象にならないことが多く、その場合は生活保護を検討します。

当面のお金が足りないとき:社会福祉協議会の貸付

市区町村の社会福祉協議会では、生活が苦しい世帯向けに、低い利子または無利子でお金を貸す制度(生活福祉資金貸付)があります。消費者金融や「後払い現金化」でお金をつくる前に、まずここに相談してください。ただし、あくまで貸付なので返す必要があります。収入そのものが足りない場合は、住居確保給付金や生活保護とあわせて考えます。

比べる点 滞納する前に相談 滞納してから相談
管理会社・保証会社との関係 こじれていない。支払日の相談に乗ってもらいやすい 督促が始まり、話し合いの余地が減る
払うお金 増えない 遅延損害金などが加わることがある
使える制度 住まいを失う前に使える 時間がたつほど選べる手段が減る
放っておくと ― 最後は裁判で退去を命じられることもある

生活保護の家賃には上限がある

生活保護の家賃分(住宅扶助)には、地域と世帯人数ごとに上限があります。たとえば東京23区の一人暮らしなら月53,700円が目安です。今の家賃が上限を超えている場合は、超えた分をどうするか(家賃を下げてもらえるか、住み替えるか)を福祉事務所と相談することになります。上限は地域で違うので、必ず窓口で確認してください。

申請してから決まるまで

生活保護は、申請すると原則として14日以内に受けられるかどうかが決まります(生活保護法24条)。早く申請するほど、滞納がふくらむ期間は短くなります。

裁判例はどう判断してきたか

「家賃が遅れたら、すぐ追い出されるのでは」という不安について、裁判所の考え方を結論だけ紹介します。

最高裁昭和39年7月28日判決
長年家賃の遅れがなかった入居者について、滞納があっても、大家さんとの信頼関係を壊すほどの事情がなければ、契約の解除は認められないとした。

最高裁令和4年12月12日判決
家賃保証会社が、滞納や連絡がとれないことなどを理由に、裁判をせずに「部屋を明け渡したものとみなす」契約の条項は、消費者契約法に反して無効とした。

つまり、家賃が遅れたからといって、その日に追い出されるわけではありません。ただし、これは「滞納しても大丈夫」という意味ではありません。滞納が続けば、最後は裁判で退去を命じられることもあります。時間の余裕があるうちに、相談して手を打つことが大事です。

【現場の実際】21年の実務から

管理会社で家賃の滞納を担当していると、「もっと早く言ってくれれば打てる手があったのに」と思うことが何度もあります。現場でよく見る場面を紹介します。

場面1:誰にも言えず、電話に出られなくなった

都内の物件に長く住む、一人暮らしの高齢の契約者さんのケースです。それまで一度も遅れたことがなかったのに、ある月から家賃が入らなくなりました。電話に出ず、手紙にも返事がありません。お部屋を訪ねると、郵便物がたまり、ゴミも片づけられない状態でした。

話を聞くと、払う気持ちはあるのに、年金だけでは足りず、どうしていいかわからないまま時間が過ぎていたのです。福祉事務所での生活保護の申請に同行し、地域包括支援センターにもつないだことで、ようやく生活を立て直す道筋が見えました。もし最初の月に一本電話をもらえていたら、ここまで苦しい思いをせずに済んだはずです。

場面2:早めに相談してくれた人は、ほとんど住み続けている

反対に、「来月から収入が減るので、支払いが遅れるかもしれません」と先に連絡をくれる方もいます。こういう方とは、支払日をずらす相談や、公的な制度の案内がすぐにでき、大きな問題になることはほとんどありません。同じ「払えない」でも、先に言うか、黙るかで、結果がまったく変わります。

場面3:少しずつ入金しているから大丈夫、は危ない

家賃の一部だけを払い続ける方がいます。本人は「少しは払っているから」と思っていても、足りない分は毎月たまっていきます。一部しか払えない月が2か月続いたら、それは相談するべきサインです。

場面4:離れて暮らす子どもが、最後に知る

高齢の親の家賃滞納を、保証会社や管理会社からの連絡で初めて知るご家族は少なくありません。親は子どもに心配をかけたくなくて黙っています。ご家族が「最近、お金のことで困っていない?」と一声かけるだけで、早く手を打てることがあります。管理会社から連絡を受けたときの受け答えは緊急連絡先に電話が来たときの対応が参考になります。

場面5:保証会社からの電話を無視してしまう

滞納すると、保証会社から電話が来ます。怖くて出られない気持ちはわかりますが、無視を続けると、話し合いの余地がなくなっていきます。出られなかったら、落ち着いてから折り返し、「支払いの相談をしたい」とだけ伝えてください。保証会社がいつ何をしてくるかは滞納すると保証会社はいつ動くかにまとめています。

ケース別の負担区分・対応

あなたの状況に近いものを探してください。

あなたの状況 まず相談するところ 使える可能性がある制度 今日やること
仕事を失った・収入が減った 市区町村の自立相談支援機関 住居確保給付金 窓口に電話して予約。収入が減ったことがわかる書類を集める
年金だけでは家賃と生活費が足りない 福祉事務所 生活保護(家賃は代理納付) 年金の振込通知と通帳を用意して相談に行く
お金の管理や手続きがつらくなってきた 地域包括支援センター 金銭管理の支援・見守り・介護 センターに電話して「お金の管理が不安」と伝える
一時的に今月だけ足りない 管理会社 支払日の相談 支払日の前に「いつまでにいくら払えるか」を伝える
親の家賃が心配 親の住む地域の地域包括支援センター 上記すべて 親に状況を聞き、一緒に相談する約束をする

着地の実務——どこで折り合うか

現実的な手順

  1. 今日:管理会社に「家賃の支払いが難しくなりそう」と電話する。払えそうな日と金額がわかれば伝える。
  2. 今日〜3日以内:上の表で自分に近い窓口に電話し、相談の予約をとる。
  3. 相談の日まで:持ち物(下記)を集める。全部そろわなくてもかまいません。
  4. 相談の日:窓口で状況を話す。生活保護になったら、家賃は大家さんに直接払ってもらう(代理納付)ことを確認する。
  5. その後:決まったことを管理会社に伝える。「生活保護の申請中です」と伝えるだけでも、待ってもらいやすくなります。

持っていくとよいもの:本人確認できるもの(マイナンバーカード・保険証など)、賃貸借契約書、年金や給料がわかるもの(通帳・振込通知)、光熱費などの請求書、滞納している場合はその通知。何もなくても、まず相談はできます。

窓口での言い方の例:

  • 「これから家賃を払うのが難しくなりそうで、相談に来ました。」
  • 「年金だけでは家賃と生活費が足りなくて、どうすればいいか教えてほしいです。」
  • (ご家族の場合)「離れて暮らす親の家賃が心配で、本人も不安がっています。」

やってはいけないこと

  • 何も言わずに滞納すること。連絡がとれない人が、一番話し合いの余地を失います。
  • 家賃を払うために、消費者金融や「後払い現金化」でお金をつくること。借金が増えるだけで、翌月また同じことになります。
  • 保証会社からの電話を無視し続けること。
  • 黙って部屋を出ていくこと。荷物や契約の問題が残り、後から費用を請求されることがあります。

よくある質問

Q1. 管理会社に「払えない」と言ったら、すぐ出ていくように言われませんか。
まず言われません。管理会社が困るのは、連絡がとれなくなることです。先に相談してもらえれば、支払日の相談や窓口の案内ができます。
Q2. 生活保護を受けたら、今の部屋に住み続けられますか。
家賃が住宅扶助の上限以内なら、住み続けられることが多いです。上限を超えている場合は、福祉事務所と相談して、家賃を下げてもらうか、住み替えるかを決めます。
Q3. 住居確保給付金と生活保護は、どちらを先に相談すればいいですか。
仕事を失った・収入が減ったのが原因なら、まず住居確保給付金を市区町村の自立相談支援機関に相談してください。どちらが合うかは窓口で一緒に判断してくれます。
Q4. 代理納付にすると、大家さんに生活保護のことが知られますか。
家賃が福祉事務所から支払われるので、大家さん・管理会社には伝わります。ただ、家賃が確実に入るので、大家さん側は安心するのが普通です。
Q5. 親が家賃を滞納していると保証会社から連絡が来ました。子どもが払う義務はありますか。
連帯保証人になっていなければ、原則として払う義務はありません。ただ、放っておくと親の住まいが危うくなるので、親の住む地域の地域包括支援センターや福祉事務所に早めに相談してください。

まとめ

家賃が払えそうにないと感じたら、滞納する前に相談する。お金のことは福祉事務所や自立相談支援機関、暮らしのことは地域包括支援センター。仕事を失った人は住居確保給付金、生活保護を受ける人は家賃が大家さんへ直接払われる代理納付。そして管理会社にも早めに一本電話を入れる。早いほど、選べる道は多く残っています。

この記事の裏づけ

▶ あわせて読みたい関連記事

入居準備ラボも運営中

引越し・回線・家電・入居準備に関する情報はこちらのブログで発信しています。

▶ 家賃が払えないから「後払い現金化」に手を出す前に|違法業者の見分け方と抜け出す方法

最後までお読みいただきありがとうございました

この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

ご質問・ご相談をコメント欄で受け付けています。いただいた内容は、後日ブログ記事として回答させていただきます。「うちの案件ではどうなるか」という個別のご相談も歓迎します。同じ問題に直面している方の助けになりますので、お気軽に書き込んでください。


執筆者:不動産管理会社勤務・業界21年。賃貸管理/入居審査/家賃滞納対応/退去立会い/原状回復を担当。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別事情により対応は異なります。法的判断や具体的な対応は、必要に応じて弁護士・専門家・関係機関へご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました